仏壇をどうして家に置くようになったのか

仏壇をどうして家に置くようになったのか

お坊さん

昔から、日本の家には先祖代々大切に扱ってきた仏壇が置かれていることが珍しくありませんでした。現代では核家族化が進み、マンションやアパートなど狭い住居で暮らす人々も増え仏壇が置かれていない家も多いですが、実家には大きな仏壇が置かれていて親族の誰かが手入れをしているということが一般的です。

仏壇に触れる機会の多かった昔の人にとっては、仏壇を自宅に置くことに抵抗を感じることはなくむしろ大切にしていきたいと考えているでしょう。しかし、現代のライフスタイルや狭い住居では仏壇を家に置くということはなかなか難しいと考える人は少なくないはずです。

そもそも、仏壇はどうして家に置くようになったのでしょうか。

お墓はお寺にあるのに、わざわざ自宅にも仏壇を置かなければならないのは何故でしょうか。仏壇を自宅に置いてある人であっても、この理由についてはそういえば理由がわからない、という人も多いのではないでしょうか。歴史を遡ると、仏壇自体が日本で作られるようになったのは奈良時代のことです。

天武天皇の命により国ごとに作られていた仏舎と呼ばれるものがやがて全国に置かれるようになり、それが仏壇の始まりといわれています。ただし、その当時の仏壇というのは、まだ庶民の家庭に置かれるような一般的なものではありませんでした

今のように一般庶民の家庭にも仏壇が置かれるようになったのは、江戸時代からと言われています。これは、江戸時代に寺檀制度というものが制定されたことが理由です。このように、仏壇が家庭に置かれるようになった理由には、その時代ごとに決められた制度が大きく影響していることがわかります。

徳川家康

【徳川家康によって檀家制度が進められていきました】

仏壇を家庭に置くことのメリットとは?

昔の時代は当時の制度が理由で仏壇を家庭に置くようになりましたが、現代でもわざわざ各家庭に置いているということは、それなりにメリットがあると考えられます。

お寺に墓参りをするだけでなく、仏壇を家庭に置くことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。一見すると、仏壇は大きく場所を取りますし、良くも悪くも厳かな雰囲気を醸し出すためインテリアにも影響をもたらします。

それなりに高価なものなので大切に扱わなければなりませんが、湿気や汚れによっても傷みやすいので長期間手入れを怠ることもできません。しかし、仏壇を家に置くということで日常生活の中でご先祖様の存在を身近に感じることができます。

お寺にお墓参りをすることができる機会というのは限られていますが、自宅に仏壇があればいつでもご先祖様にお供えをしたり手を合わせたりすることができます。いくらご先祖様を大切に思っているつもりでも、墓参りをする時期にならないと毎日が慌ただしくゆっくりと思い出すことができないものです。

また、なんらかの事情でお墓参りができずにいると罪悪感を感じてしまいますが、自宅にある仏壇に手を合わせることで少しは心が軽くなるのではないでしょうか。仏壇は、扱いに慣れていない人にとっては時に煩わしい存在に感じられることもあるかもしれません。

けれども、何か思い悩んだりした時や、大事なことを控えて不安に感じている時などに、仏壇の前に座ることでご先祖様が見守ってくれていることを感じて心が救われる人も多いです。

仏壇の前に座ると、なぜか雑念だらけの心も不思議と冴え渡り、背筋が伸びて気持ちを新たにできるものです。このように仏壇というのは、私たちに手間や苦労を与えるだけのものではなく、時に私たちに力を与えてくれたり、心を穏やかにしてくれる強い味方にもなりえるのです

さらに、仏壇が置かれているのを見ると、小さな子供でもご先祖様というのはどういう人だったのか、と自然と関心を抱くようになるはずです。普段ご先祖様のことを意識することのない子供にとっても、祖父母や両親と仏壇の前に立つことで、ご先祖様の話をじっくりすることができるのも大きなメリットです。

仏壇というのは、家族や親族の心をつなぐ重要な役割を持っているということがわかります。

仏壇は必ず家庭に置かなければならないのか

仏壇というものが大切なもので、家庭に置くことによりさまざまなメリットがあるという説明をしました。それでは必ず自宅に置かなければならないのだろうか、と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。

しかし、決してそういうわけではないので安心してください。仏壇は絶対に家庭に置かなければならないものではありません。最初から仏壇を置いていない家庭もあります。

元々は自宅に置いていたけれど、訳あって仏壇を処分してしまうというケースも実際にはあります。一軒家だけではなくマンションや賃貸住まいも多い現代の住居事情では、仏壇を置くのは物理的に難しいこともあります。

高齢化が進んでいることもあり、仏壇の管理をする人が年老いてやがていなくなってしまうということも増えています。

このような場合は、仏壇を家庭に置くことはできず、処分を検討しなければなりません。それでは仏壇を処分するにはどのようにしたらよいのでしょうか。

仏壇は、購入して自宅に初めて開眼供養というものが行われています。これにより、元々は何も入っていなかった仏壇にご先祖様の魂が入ると考えられます。

仏壇を処分をする際には、もちろんご先祖様の魂が入ったままというわけにはいきません。処分を決めたなら、開眼供養とは逆の閉眼供養を行う必要があります

菩提寺で仏壇の閉眼供養、いわゆる魂抜きをしてもらえば仏壇は問題なく処分することができます。閉眼供養をした仏壇は、事実上ご先祖様の魂は既に抜けていることになるので、見た目は仏壇でも普通の家具と同じものだと考えられます。極端な話、粗大ゴミに出して処分しても問題はないのです

ただ、さすがに仏壇を粗大ゴミに出すのは気が引けるという人は多いので、供養をしてもらったお寺で焚き上げによる処分を依頼するケースが多いです。事情によりお寺に依頼することが難しい場合は、不用品回収業者を利用するという方法もあります

仏壇の運び出し

【仏壇整理専門業者による仏壇搬出の様子】

大切なのはご先祖様を思う気持ち

仏壇が家庭に置かれるようになったきっかけは、昔の時代の制度によるものでした。それ以来、庶民の家庭にも当たり前のように仏壇が置かれるようになり、とても大切なものとして扱われてきました。

しかし、現代では仏壇を置くことが難しくなってきている家庭もあります。そのようは場合は、無理せず仏壇を処分してもいいのです。狭い住居にも設置できるようなコンパクトなサイズの仏壇に買い替えるのもひとつの方法です。また、仏壇がなくても写真を飾りささやかな花を飾ったり、時々手を合わせるだけでも十分な供養となるでしょう。

仏壇は必ず家に置かなければならない、処分などもってのほか、という義務感を持っている日本人は多いです。しかし、そのような義務感が負担になるようでは、本来ご先祖様を大切にすることが目的であるはずなのに意味がありません。

ご先祖様も仏壇があることで子孫に負担をかけることを願っているとは思えません。仏壇を先祖代々引き継いでいくことももちろん大切なことですが、何よりも大切なことはご先祖様に感謝する気持ちを忘れないことではないでしょうか。

その気持ちがあれば、仏壇の有無に関係なくご先祖様もいつも見守っていてくれるはずなので安心してください。

 

関連リンク

仏壇を処分したいとお考えの方へ ⇒ https://gokuyo.com/useful/2020/08/14/1408/

お仏壇をミニサイズに変更する方法(浄土真宗)  ⇒ https://gokuyo.com/useful/2020/01/28/587/

浄土真宗の仏壇の処分方法について ⇒ https://gokuyo.com/useful/2020/12/23/1917/

宗派が分からない場合の仏壇の片付けについて ⇒  https://gokuyo.com/useful/2021/03/23/1982/

 

位牌・遺影・仏壇などの魂・お性根抜き供養~整理処分をするなら → https://gokuyo.com/