追善供養というのは、先祖や故人といった大切な人を偲ぶためのものです。仏教では故人への感謝の気持ちを思い出したり、在りし日の思い出を振り返って時の経過で記憶が薄れないようにすることが供養になるという考え方があります。
三回忌などの法要だけでなく、毎日行う供養全体のことを追善供養といいます。
追善供養について
具体的な内容はそれぞれの家や地域、宗派によって異なりますが、
- 毎日仏壇に手を合わせる
- 感謝の気持ちを込めてお墓を掃除したり墓参りをする
- 定期的に故人の冥福を祈るなど
できる範囲で行うだけでも問題ありません。
追善供養がどうして行われているかというと、仏教の考え方が大きく影響しています。仏教では、生きている人が追善供養などで故人に感謝を伝えたり、善行を行うことによって、その人が偲んでいる先祖や故人の善行も積み重なっていき、さらにその良い影響が自分に戻ってくると考えられています。
「故人が心安らかに極楽往生できるように、自分自身も先祖や故人に見守ってもらえるように」という思いから、追善供養を行っています。毎日追善供養を行うのは、日々の積み重ねによって故人への感謝の気持ちや冥福を祈る気持ちをより強くするため、月日が流れても先祖や故人のことを忘れないようにするためでもあります。
ちなみに、追善供養を推奨している宗派が多くはありますが、浄土真宗では追善供養をするという習慣はありません。
もちろん、折に触れて僧侶を呼んでお経をあげてもらう年忌法要は必要ですが、浄土真宗の場合は人は亡くなったらすぐに往生するという「臨終即往生」の考えがあるため、亡くなった人が往生するために生きている人が善行を積むという目的の、追善供養は必要としていないのです。
どちらかといえば、
「故人の冥福を祈ったり感謝をささげるのではなく、年忌法要などをきっかけにして、故人によって生きている人たちが縁を持ち続ける機会を得る」
という考え方になっています。
三種の供養
追善供養は、一般的な年忌法要や毎日のささやかな善行が中心となっていますが、それ以外の供養も追善供養と同様の目的を持っています。供養は大きく分けて、三種の供養があります。
- 亡くなった人に花や香、食べ物といったお供え物を供える利供養
- 本尊に手を合わせてお経を唱えたり、僧侶を呼んで読経を挙げてもらう敬供養
- 仏道修行を行う行供養
の3つになります。
追善供養の場合は、故人への感謝や真心を表すとされている利供養、仏教を敬うことで善行を積む敬供養を行うことがほとんどです。
先祖を供養する場合には、お墓参りや仏壇へのお供え、お経をあげる行為などが毎日できる供養となりますが、年忌法要では寺院に頼んでお経をあげてもらうのが一般的です。その際は早めに菩提寺(お付き合いしているお寺)に連絡をして日程調整をしたうえで、親族や知人などに連絡を入れておく必要があります。
お墓に関しては、通常は先祖代々のお骨を納めている家のお墓にお参りすることになります。ただ、近年では子供が遠方に生活拠点を移しているという家庭が多くなっているため、先祖代々のお墓は墓じまいして、永代供養を選ぶケースも増えています。
永代供養について
永代供養というのは、こまめにお墓参りやお墓の管理をする人がいない場合に、寺院や霊園が供養や管理をしてくれるというものです。
祭祀の承継者が永代供養をする寺院に依頼するケースもありますが、将来的にお墓を任せられる人がいない場合に、生前に寺院に申し込んでいるという人も増えています。
永代供養の場合は33回忌までは個別の埋葬を行い、その後は永代供養墓に合祀(他の人と合わせて祀ること)して供養するというケースが一般的です。もちろん、身内や知人はいつでもお参りすることができます。
永代供養の場合、お墓の購入費がかからずに安く済みますし、例えば夫婦二人で同じところに埋葬してもらうといったサービスもありますので、検討している場合には寺院にどのような供養になるのか確認しておくとよいでしょう。
家に仏壇がない場合の追善供養の方法は?
仏壇に関しては、家に仏壇を置いているときには追善供養がしやすいですが、マンション住まいなどで仏壇を処分している場合には、お供えをしたりお経をあげたりすることが難しくなります。
ただ、追善供養に特別決まった内容というものはありませんので、位牌や故人の写真にお供えをしたり手を合わせるといった行為でも問題はありません。
また、狭い家でも追善供養ができるミニ仏壇などもありますので、お墓参りは頻繁にはできない、できれば仏壇のない家で追善供養をしたいと考えている場合には、検討してみてはいかがでしょうか。
追善供養で大切なのは、故人への感謝の気持ちを持ち続けること、故人のためにも自分のためにも善行を積み重ねていくことですので、自分のできる範囲で行うようにすれば十分なはずです。
まとめ
このように、追善供養は同じ仏教でも考え方の違いによって行わない宗派も見られますが、全体的に故人への感謝の気持ちを持ち、善行を積むという目的から広く行われています。
多くの家庭では、仏壇やお墓の掃除、毎日の水やお供え物の入れ替え、仏壇に手を合わせる行為などを特別視せず、日常の決まり事としてこなしているものです。しかし、実際には追善供養を毎日続けるのはきちんと理由があり、故人への感謝の気持ちを持ち続けるとともに、自分自身に対してよい行いができるように、という考え方で成り立っています。毎日のルーティンワークとしてではなく、意味のある儀式として追善供養を行っていきたいですね。