臨済宗は日本の仏教における禅宗の1つです。
鎌倉時代に成立したことから、鎌倉仏教と呼ばれることもあります。
臨済宗の教えの特徴は自力です。仏の力によって救ってもらう他力に対して、人間が自ら坐禅をすることによって悟りに至ろうとするのが特徴です。
坐禅に打ち込むことで自分自身を深く見つめ、純粋な人間性を見出すことを重視することから武士に好まれたそうです。あなたの先祖はお武家様だったのかもしれませんね。
臨済宗は日本の文化に大きな影響を与えたのも特徴です。
ビックリしたのは、臨済宗を日本に普及させる時に中国からお茶の種もいっしょに持ち帰り、お寺で栽培を始めたことから、日本各地にお茶が広まる一因になったそうです。
また、水墨画や能など日本を代表する文化の開花にも大きく関わっています。
臨済宗の開祖と歴史は?
日本における臨済宗の開祖は栄西という僧侶です。
平安時代の末期から鎌倉時代の初期にかけて活躍した僧で、1141年に生まれました。栄西は幼少の頃から難しい仏教書を読みこなしたとされ、1168年に平家の庇護を受けて中国の宋に渡ります。
宋に渡った栄西は当時現地で繁栄していた禅宗に触れ、日本の仏教を立て直すために禅を学ぶことを決心します。
1191年に宋から2度目の帰国を果たした栄西は、九州を中心に布教を開始します。
1195年に日本初の禅の道場とも言われる聖福寺を博多の地に建設した後、鎌倉幕府の庇護を得て禅宗を大きく普及させました。
当時の武士社会では武術の修行が重視されており、禅宗が修行の一環として支持されました。
臨済宗はその後、室町幕府の支持も得て武家を中心に広まっていきましたが、戦国から江戸時代前記にかけては一時期衰退します。しかし、江戸時代中期に禅が体系化されたことにより、やがて庶民にも広まっていきました。
臨済宗のお経はどんな意味?
・開経偈
開経偈は日常のおつとめの際に最初に読まれるのが特徴のお経です。
開経とは、その名の通りお経が書かれた文の紐を解き、お経を開くことを意味します。偈とは、仏の功徳を讃えた句という意味です。お経を開いて、仏の教えを得られるように願うものです。
仏祖の尊い教えは長い年月をかけても出会うのが難しいにも関わらず、有り難い教えに出会うことができたことへの感謝が込められています。
・大悲咒
大悲咒はいわゆる観音様である、観自在菩薩の慈悲をあらわす経典です。補陀洛山という観音様の道場が経典の舞台です。千手千眼とともに授かったとされる、人々に安楽をもたらすための力について説かれています。
大悲咒は大悲心陀羅尼とも呼ばれます。陀羅尼は真言と訳すことができますが、大悲咒をインドから中国に持ち込んだ玄奘三蔵は、翻訳をすると本来の意味から外れるおそれがあるため、原典のサンスクリット語の発音がそのまま漢字になっているのが特徴です。
玄奘三蔵は、西遊記の三蔵法師のモデルになった方だそうです。
臨済宗の本尊と脇侍は?
宗派の信仰の対象として最も尊重される本尊と、脇侍(きょうじ)を紹介します。お仏壇の中央に飾ってあるのが本尊で、その左右両脇にあるのが脇侍です。
臨済宗は、仏の性質を自分の中に見出すことを大切にするため、じつは特定の本尊を持たないという特徴があります。そのため、これが本尊でなければならないという統一された決まりはありませんが、釈迦牟尼仏を本尊とする場合が多くなっています。
釈迦牟尼仏は仏教を開いた釈迦を仏として敬うための呼び名です。本尊を祀る方法としては仏像や掛け軸などがありますが、臨済宗ではどちらを用いるかの厳密な決まりはありません。
左右に配置する脇侍についても、本尊と同様にこれでなければならない対象はありません。薬師如来や観世音菩薩などの仏のほか、禅宗の功労者である達磨大師や臨済義玄などが祀られることもあります。
臨済宗の数珠と合掌の特徴は?
臨済宗で用いられる一般的な数珠は、人間の煩悩の数を象徴する108個の主玉が付いています。
男性用と女性用は玉のサイズや房の形状が異なりますが、玉の形と並びは共通です。数珠を使わずに持ち歩くには、左手の手首にかけます。
持つときは数珠の輪をひねって二重の形にしてから、房の部分を下にします。合掌で両手を合わせるときは、二重にした数珠を左の親指と人差し指の間にかけておきます。
合掌は仏に挨拶をして感じるための基本的な動作ですが、臨済宗の合掌はきちんと正座をしてから取り組むのが基本です。背筋を伸ばして顎を軽くひくことで、姿勢と心を引き締めようとするものです。合掌の際も背筋をきちんと伸ばし、親指の付け根とみぞおちを同じくらいの高さにするのがポイントです。
両手の指をそろえてまっすぐにし、手の平同士を深く柔らかくつけて綺麗な合掌の形にします。
臨済宗の葬儀の特徴は?
臨済宗における葬儀は、亡くなった人が仏性に目覚めるための儀式という役割を持っています。仏性とは、言葉を超えた理解によって仏の道を自覚できる能力のことで、誰でも仏になり得る可能性があることを示します。
葬儀は仏としての道を歩めるようにする儀式ということで、故人を仏道に入門させる授戒、仏の加護を祈る念誦、仏門から浄土に旅立つための引導などが葬儀の中心になります。
臨済宗の葬儀の中でも特に印象的なのが引導渡しです。棺の前に立った導師が法語を詠むのが儀式の中心ですが、最後に「喝」という言葉を叫ぶのが特徴です。
これは故人の未練を気合とともに取り除くことで、迷わずに仏の世界に行けるようにするという意味が込められています。また、引導の儀式の中で先端が赤い棒を回し投げることがありますが、これは煩悩を松明で焼き尽くすという意味です。
臨済宗の焼香の方法は?
臨済宗の焼香は、遺影の前で香炉を用いて行います。焼香の基本的な流れは、まず仏前で合掌と礼拝をします。
次に、お香を軽くつまんで香炉に入れます。最後に再び合掌と礼拝で終了です。
臨済宗の焼香はシンプルなのが特徴です。
他の宗派ではお香を額に押しいただく、3回ほど焼香を行う、などの場合がありますが、臨済宗は額に押しいただくことなく、1回だけで焼香を済ませるのが基本形です。
もっとも、臨済宗でも場合によっては2回の焼香を行う場合もあります。額に押しいただいて1回焼香し、次に軽くつまんで香炉に入れる方法で、1回目は主香、2回目は添え香と言います。
臨済宗の線香の本数は基本的に1本だけです。1本を折らずに中心に立てる方法で、左手であおいで線香の火を消してから供えまます。1本の線香は心を迷いなく一心にすることを表しています。
臨済宗のまとめ
臨済宗は鎌倉時代に栄西が広めた禅宗の1つです。自ら坐禅に打ち込むことで自分の中の深い人間性に気付き、悟りを開こうとするのが特徴です。
臨済宗は鎌倉幕府や室町幕府など、武家政権の支持と庇護を得て勢力を拡大し、お茶や水墨画などの日本の文化の開花にも大きく貢献しています。その後、江戸時代中期には広く民衆にも広まっていきました。
今でも「喝!!」とたまに聞きますが臨済宗から来ているのですね!
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