宗派の違いは?実家がお付き合いしているお寺の宗派とは?(日蓮宗編)

日蓮宗にちれんしゅうは日本の仏教の宗旨の1つで、山梨県にある身延山久遠寺みのぶさんくおんじが総本山です。南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょうのお題目を唱えることを重要な教義としています。法華宗ほっけしゅうとも呼ばれます。

南無妙法蓮華経の7文字を功徳の基本とし、繰り返し唱えることで死後に釈迦牟尼仏しゃかむにぶつに救われ、成仏することができると捉えます。

総本山がある身延山みのぶさんは、日蓮宗の開祖が弟子たちとともに晩年を過ごしました。重要な教義である法華経の読誦や、弟子や信徒に正しく教えを伝えることに邁進まいしんした地です。

日蓮宗の開祖と歴史は?

平安時代中頃から鎌倉時代の始めにかけて、地震や噴火などの災害が勃発しました。また、貴族の時代から武士の時代に変わっていく混乱の中で、相次ぐ戦の被害や飢饉に人々は苦しんでいました。

そうした様子に胸を痛めていたのが日蓮宗の開祖である日蓮です。出家して高野山などで僧侶としての修業をしていた日蓮は、天変地異による世の乱れは悪法が広まっているからだと鎌倉幕府に訴えました。

ところが、日蓮が記した批判の内容を恐れた幕府は、伊豆への流罪という刑罰を課してしまいます。日蓮は迫害にめげることなく、1253年に法華経を拠り所とした日蓮宗を立ち上げて布教を始めました。

日蓮が布教していた当時、生まれや身分によっては成仏できないという考え方がありましたが、差別なく皆が平等に成仏できると説いた日蓮の教えは、当時の仏教に新たな流れを作り出しました。

日蓮宗のお経はどんな意味?

欲令衆よくりょうしゅう

欲令衆は重要な経文を抜粋してまとめたものです。欲令衆に含まれるお経として、方便品ほうべんほん第二、譬喩品ひゆぼん第三、法師品ほっしほん第十などがあります。仏が現世に出現した理由や、人々の救済の証明などがお経の中で語られています。

人が住んでいる世界は生きること、老いること、病気になること、死ぬことの4つの苦しみから逃れられない場所であり、それは常に火で燃え盛る家に住むようなものですが、苦しむ人々はみな仏の手の中にあると説いています。

運想うんぞう

運想は日蓮宗の教義の中でも重要な、お題目を唱える前に拝読するためのものです。お題目はシンプルなぶん心がこもっていない単調なものに陥るおそれがあることから、運想を唱えることで心を集中します。

運想という言葉は、お題目に思いを巡らすという意味が込められています。お題目を心をこめて唱えることは三宝に供養を捧げることであり、それによって仏と同じ境地にたどり着き、救いを感じることができると説いています。

日蓮宗の本尊と脇侍は?

宗派の信仰の対象として最も尊重される本尊ほんぞんと、本尊の左右に祀られる脇侍わきじ(きょうじ)をご紹介します。

日蓮宗の本尊は、仏教の他の宗派と大きく異なるのが特徴です。仏教の多くの宗派では本尊として釈迦如来しゃかにょらい大日如来だいにちにょらいなどの仏をまつりますが、日蓮宗では本尊として大曼荼羅だいまんだらを祀ります。

大曼荼羅は日蓮宗の教えの中心である法華経を文字で表現したもので、人々を救済するための真理や宇宙観が描かれています。曼荼羅には法華経に登場する仏、菩薩、守護神などの名も記されています。

【大曼荼羅の例】

また、本尊である大曼荼羅の前には、日蓮宗の開祖である日蓮聖人の像も置かれます。本尊自体はあくまで曼荼羅なので、日蓮の像は一般的な本尊用の仏像に比べると一回り小さいサイズが多くなっています。

日蓮宗の脇侍には大黒天だいこくてん鬼子母神きしもじんが祀られます。大黒天は七福神の1人としてもお馴染みですが、日蓮宗においては戦いの守護神です。鬼子母神は元は恐ろしい鬼でしたが、釈迦の諭しによって子供を守る守護神になりました。

日蓮宗の数珠と合掌の特徴は?

日蓮宗では一般に108個の玉を連ねた数珠を使います。略式の数珠として玉の数が27個や64個の数珠もありますが、基本的には使いません。また、玉の形は扁平したものではなく、できるだけ球状が望ましいとされます。

数珠には房やぼんぼりが付いたものがありますが、日蓮宗では房付きのものは主に僧侶が用い、一般的にはぼんぼりを用います。房やぼんぼりは左側に2つ、右側に3つ付いたものを使います。

日蓮宗の基本的な合掌の方法は、両手の十指を全て着けてそろえた状態にするのがポイントです。指が離れている、交差している、手のひらが膨らんでいるなどの状態は避けます。

合掌の際の手の高さは、中指を真上に向けると顎にあたる程度の高さが適しています。合掌をするあいだ、手は胸板に着けておきます。数珠を持ちながら合掌する場合、二重にしてから左手で持ちます。

日蓮宗の葬儀の特徴は?

日蓮宗の葬儀では、教義の中心でもあるお題目を唱えることが重視されているのが特徴です。葬儀の様々な場面の中で、お題目の南無妙法蓮華経が唱えられます。それによって故人の信心深さを示すのです。

他の宗派では参列者は僧侶の読経を聞くだけの場合が多いですが、日蓮宗の葬儀では参列者と僧侶が一緒になって読経をします。お題目をともに唱えるという、日蓮宗の基本的な教義の現れと言える特色です。

お題目以外の日蓮宗の葬儀の特徴としては、開棺と引導があります。開棺は故人の棺のそばに僧侶が立って、棺の蓋を叩きながら読経をします。開棺は引導の前触れとしての役割があり、食事やお茶も供えられます。

引導は故人を仏に会わせるための儀式なので、葬儀全体の中でも重要な役割を担っています。煩悩を払うための用具である払子ほっすを使いながら、引導文を読み上げるのが日蓮宗の引導の基本的な流れです。

日蓮宗の焼香の方法は?

日蓮宗の焼香の基本的な回数は、導師が3回で一般参列者が1回です。厳密な回数の決まりはありませんが、焼香者が大勢いる場合は周囲の状況を判断して1回にしておくのが無難です。

南無妙法蓮華経を唱えながら、参列者が順番で焼香をしていくのが日蓮宗の一般的な流れです。焼香をする場合、お香を額に押し頂くようにするのが基本的な様式になります。

焼香の順番が回ってきたら、焼香台の前に立ってまず合掌と一礼を行います。お香は右手の親指と人差し指の2本を使ってつまみます。抹香を軽くつまんで静かに注いだら、再び合掌と一礼をして席に戻ります。

日蓮宗の線香の本数は1本もしくは3本です。1本だけの場合は、線香を折らずに中央に立てるのが一般的です。線香を立てる香炉については、3本足のものは手前に1本が来るように置くのが作法です。

日蓮宗のまとめ

日蓮宗は鎌倉時代に活躍した日蓮が開いた仏教の宗派です。南無妙法蓮華経のお題目を教義の中心とし、お題目を繰り返して唱えることによって死後の救済と成仏がかなうと説いています。

日蓮宗が開かれた当時は天災や戦乱などで世の中が乱れており、また一部の人は成仏できないなど仏教の教えが硬直化していた時代でもありました。

お題目を唱えることで身分を超えて差別なく人々が救われるという日蓮の教えは、後の時代の仏教の大きな流れを形成しました。

 

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