天台宗(てんだいしゅう)は大乗仏教の宗派の1つで、法華経とよばれる妙法蓮華経を経典とします。天台宗という名称は中国における開祖が住んでいた天台山の名前に由来します。天台法華宗と呼ばれることもあります。
天台宗の教えの特徴は、全ての民(万民)が仏になれるとする法華一乗(ほっけいちじょう)です。一乗とは乗り物を意味する言葉で、ありがたいお経である法華を唯一の乗り物とし、故人が仏の世界に導かれることを示しています。
天台宗以前の仏教では修行者の立場ごとに3種類の教えがあり、能力によっては成仏できないとする三乗説が支配的な考えでした。その中で、全ての民が能力に関係なく救われるという斬新な教えを広めたのが天台宗です。
天台宗の開祖と歴史は?
日本における天台宗の開祖は、平安時代に活躍した僧である最澄です。最澄は桓武天皇の援助を受けて中国に渡り、中国の天台宗の総本山である天台山で教えを学びました。
最澄が帰国したのは806年で、自らが学んだ教えをもとに天台宗を広めていきました。当時の日本にはすでに仏教はありましたが、法華一乗を中心とする斬新な教えが世の中に大きな影響を与えました。
最澄が入滅したのは822年のことで、後に清和天皇から日本初の大師号である伝教大師(でんぎょうだいし)の称号が贈られました。後に誕生する様々な宗派の開祖が天台宗から学んだことから、日本仏教の母とも呼ばれます。
天台宗は唐で学んで帰国した最澄によって平安時代に開かれました。能力によって成仏できるかどうかが異なるという当時の日本の仏教の主流とは異なり、万民が救われるという斬新な教えを展開しました。
法華経の力で全ての民が仏になれるとする法華一乗は日本の仏教に大きな変化をもたらし、その後に登場する様々な宗派の開祖たちも天台宗で教えを学びました。
天台宗のお経はどんな意味?
天台宗のお経には様々な種類がありますが、その中から代表的なお経をご紹介します。
・妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)
天台宗の教えの中心となる最も重要なお経で、一般に法華経と呼ばれるものです。聖徳太子の計らいにより日本に伝わったとされ、当時の法華経に関する講義の記録も残っています。
法華経は1〜8巻まであり、釈迦が最後に説いたお経と言われています。法華経とは、泥の中で蓮の華が咲いている様子を意味します。汚れの中からも美しい花を咲かせることができるように、全ての人が救済を求められことを伝えています。
・大毘盧遮那経(だいびるしゃなきょう)
大乗仏教における経典の1つで、7世紀頃に成立したとされています。インドから古代中国の唐に伝わったもので、大日経とも呼ばれます。密教における重要なシンボルである曼荼羅や、儀式の作法、唱えられる真言などについて多く説かれています。
一見すると具体的な解説書のようですが、修行の師匠からの直接的な伝授がなければ記載されている事柄の深い意味までは理解できないとされます。
天台宗の本尊と脇侍は?
天台宗の本尊は阿弥陀如来、薬師寺如来、観音菩薩、地蔵菩薩、不動明王などですが、必ずこれでなければならないという決まりはありません。
特定の本尊を持たない理由は、天台宗では全ての仏は法華経に説かれている、釈迦牟尼如来が姿を変えたものと捉えているからです。釈迦が現世で悟りを開いた姿もその現れであるとし、この概念を久遠実成無作(くおんじつじょうむさ)といいます。
天台宗の本尊は全て釈迦牟尼如来の化身となりますが、家庭の仏壇に祀る本尊としては、阿弥陀如来の仏像が一般的です。浄土宗や浄土真宗などの宗派では、一般に立った姿の阿弥陀如来を本尊としますが、天台宗では座っている阿弥陀如来を本尊とします。
本尊の左右に配置する脇侍も厳密な決まりはありませんが、仏壇に向かって右に天台大師(中国天台宗の開祖とされる高僧)、左に伝教大師(日本の天台宗の開祖である最澄)を配置するのが一般的です。
天台宗の数珠と合掌の特徴は?
仏教の多くの宗派では丸い玉が連なった数珠を使うのが一般的ですが、天台宗は平玉と呼ばれる楕円形の数珠を用いるのが特徴です。数珠には108個の主玉が配置され、人間の煩悩を表しています。
天台宗の数珠は大きい順に大平天台、9寸、8寸の3種類のサイズがあります。大平天台は主に僧侶用で、9寸が男性用、8寸が女性用です。
数珠を持ちながら合掌する場合、両手の人差し指と中指の間に数珠をはさみ、房の部分を下方に垂らします。おつとめでは最初と最後に数珠をすりあわせ、煩悩からの解放を願います。
天台宗の合掌は、両方の手のひらをしっかりと密着させて左右の指を自然に合わせます。天台宗では右手が仏による悟りの世界を表し、左手が人間の迷いの世界を表すとしています。合掌によって、迷いから悟りに導かれることを示します。
天台宗の葬儀の特徴は?
天台宗は仏の教えをわかりやすく説いた顕教と、教えの深い部分を表している密教の2つの性質を持っています。そのため、葬儀の儀式も顕教と密教の両方の性質があります。
天台宗の葬儀は3つのプロセスが重視されるのが特徴です。顕教法要、例時作法、密教法要の3つです。
顕教法要はお経を唱えながら、生活の中での悪いことを懺悔する儀式です。天台宗の教えでは、あらゆる人はその身の中に仏になれる性質(仏性)を宿していると考えます。自分の中の仏性を高める一貫として、日々の懺悔を行うのです。
例時作法もお経を唱える儀式ですが、これは死後に極楽浄土に行けることを願って行うものです。また、お経を唱えることで世の中を浄化し、極楽のような世界に少しでも近づけていく、という世直しの意味も込められています。
最後の密教法要は、亡くなった方を供養するために行う儀式です。密教における仏の秘密の言葉である、真言を唱えます。真言を唱えながら手で様々な印を結ぶのも特徴です。真言によって故人を弔い、極楽に導きます。
天台宗の焼香の方法は?
天台宗の焼香は3回が基本になりますが、3回でなければならないという厳密な決まりはなく、場合によっては1回でよいとされることもあります。
まず合掌礼拝を終えてから、右手の親指、人差し指、中指の3本を使ってお香を取るのが基本形になります。次に、右手に左手を添えながら、お香を額に頂きます。最後に頂いたお香を焼香して1回、となります。基本形はこれを3回繰り返し、最後に再び合掌礼拝をします。
線香の場合は右手に持って蝋燭で火をつけます。天台宗の線香の基本的な本数は1本または3本です。数珠を持っている場合は左手にかけておきます。
線香の火は左手で振ったりあおいだりして消します。吹き消すのは礼節を欠くので注意しましょう。次に、線香を香炉に設置してから合掌礼拝をします。線香が3本ある場合は手前に1本、奥に2本という配置で1本ずつ立てます。
天台宗のまとめ
天台宗(てんだいしゅう)は大乗仏教の宗派の1つで、法華経とよばれる妙法蓮華経を経典とします。天台宗という名称は中国における開祖が住んでいた天台山の名前に由来します。天台法華宗と呼ばれることもあります。
天台宗の教えの特徴は、全ての民(万民)が仏になれるとする法華一乗(ほっけいちじょう)です。一乗とは乗り物を意味する言葉で、ありがたいお経である法華を唯一の乗り物とし、故人が仏の世界に導かれることを示しています。
天台宗以前の仏教では修行者の立場ごとに3種類の教えがあり、能力によっては成仏できないとする三乗説が支配的な考えでした。その中で、全ての民が能力に関係なく救われるという斬新な教えを広めたのが天台宗です。
関連記事 → 宗派別のご本尊や仏具の祀り方(飾り方)について
位牌・遺影・仏壇などの魂・お性根抜き供養~整理処分をするなら → https://gokuyo.com/