曹洞宗(そうとうしゅう)は日本の仏教における禅宗の1つです。平安時代の末期から鎌倉時代にかけて起こった日本仏教の変革の中で誕生したことから、鎌倉仏教と呼ばれることもあります。本山は福井県平寺町にある永平寺です。
曹洞宗の重要な教えは坐禅です。仏教の始祖である釈迦が坐禅によって悟りを開いたことによるもので、ひたすらに坐禅に打ち込むという只管打坐(しかんたざ)を曹洞宗では重視します。
また、曹洞宗では坐禅は悟りを開くための手段ではなく、坐禅に打ち込む姿そのものが仏の姿を表しているととらえます。単に手段として修行するのではなく、修行と悟りを一体のものとするのが特徴です。
曹洞宗の開祖と歴史は?
曹洞宗の大元は中国の禅宗の1つであり、唐の禅僧であった洞山良价(とうざんりょうかい)が開祖です。日本における曹洞宗の開祖は道元で、鎌倉時代の初期に日本に伝えられました。
1200年に生まれた道元は臨済宗の建仁寺で修行した後に1223年頃に宋に渡り、当地の天童山で曹洞宗の教えを学びました。1227年頃に日本に帰国した道元は、ひたすら禅に打ち込むという教えを広めていきました。
道元の教えの特徴は、日常生活の行為の中に坐禅の修行に通じる価値を見出していることです。起床、食事、掃除などの身近な行為について、禅の修行の一環として行うように教えています。
道元は自らの教えを正伝の仏法であるとし、特定の宗派を称することを嫌っていましたが、道元の入滅後に次第に禅宗を名乗るようになりました。宗派として曹洞宗の名称を用いるようになったのは、11世紀半後半頃からとされています。
曹洞宗のお経はどんな意味?
・参同契(さんどうかい)
参同契は曹洞宗の重要な要素である禅について書かれたものです。8世紀頃に完成し、全部で44句の漢文でできています。文字数にすると220字となり、お経としては比較的短いのが特徴です。
短くて詠みやすいこともあって、奇数日などに朝の読経で参同契を唱える場合が多くなっています。言葉の流れは歌詞のように馴染みやすいですが、その中には一度では理解するのが難しい深い奥義が込めれれていると言われます。
・宝鏡三昧(ほうきょうざんまい)
宝鏡三昧は中国の曹洞宗の開祖とされる高僧である、洞山良价(とうざんりょうかい)によって記されたとされる禅についてのお経で、特に坐禅について説いたものとされています。成立は7世紀で、376文字からなる小篇です。
宝鏡三昧における宝鏡とは、宝のように優れた澄んだ鏡を意味し、釈迦の知恵の深さを鏡に例えたものです。三昧とは、坐禅の最中に精神が統一されて意識が澄み渡っているような状態のことで、熟練した禅の境地を意味します。
曹洞宗の本尊と脇侍は?
宗派の信仰の対象として最も尊重される本尊(ほんぞん)と、本尊の左右に祀られる脇侍(きょうじ)をご紹介します。
曹洞宗の本尊は多くの場合は釈迦如来です。釈迦如来は仏教の開祖である釈迦が悟りを得た後の姿を表したもので、いわゆるお釈迦様です。釈迦とは部族の名前で、王族として母の右脇から生まれたとされています。
曹洞宗が本尊とする釈迦如来の像は、多くの場合は座った姿勢の釈迦如来像が用いられます。菩提樹の下で悟りを開いたことを表すものです。
また、曹洞宗は禅宗の一派ですが、禅宗系は寺院によっては釈迦如来以外にも阿弥陀如来や観音菩薩を本尊とする場合もあります。
曹洞宗の脇侍は、常済大師と承陽大師があります。常済大師は多くの弟子を育てて禅宗を広め、承陽大師は禅の観点からどのように生きるかを示しました。常済大師は禅宗の母、承陽大師は父として敬われています。
曹洞宗の数珠と合掌の特徴は?
曹洞宗の正式な数珠は、人間が持つとされる煩悩を108個の主玉で表したものです。108玉の数珠を持つことで、自分の中の煩悩を消し去って心身を清めようとします。
数珠の持ち方は、親指と人差し指の間で輪を描くようにすると持ちやすくなります。曹洞宗の数珠は房がついており、房の部分を真下に垂らすのがポイントです。
曹洞宗における合掌は、左手を仏の世界、右手を人間の世界と解釈しています。両手を合わせることで仏の力と人間の世界が1つになり、仏と一体になれる悲願を表しています。
仏の力を授かるという意味から、数珠は通常は左手に持ちます。合掌をする方法はあまり力を入れすぎずに、手の平の力を抜いて指と指を軽く合わせるのが特徴です。指先を鼻の高さに持ってきて肘を外側に向けることで、正しい合掌の姿勢になります。
曹洞宗の葬儀の特徴は?
曹洞宗は他の宗派に比べて葬儀で行われる儀式の数が多いのが特徴です。儀式にはそれぞれの役割と意味があるので、儀式の順番を守ることも重要なポイントになります。
曹洞宗の葬儀はいくつかの段階を踏んで行われます。まずは、葬儀の当日にしきたりとして剃髪を行います。実際に髪を剃るのではなく、儀式の一貫として僧侶が読経をしながら剃る仕草をするのが一般的です。
次に、様々な儀式を順番に実施していく授戒があります。生前の悪い行いを悔いる懺悔文(さんげもん)、仏の教えを守ることを誓う三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)、仏の弟子になったことを示す血脈授与(けちみやくじゅよ)などです。
また、僧侶が読経をしている間に葬儀の参列者が焼香を済ませていく入龕諷経(にゅうがんふぎん)や、故人が迷わずに悟りの道を進めるように、棺の前でお経と十仏名を唱える龕前念誦(がんぜんねんじゅ)もあります。
曹洞宗の焼香の方法は?
曹洞宗の焼香の基本回数は2回です。自分の焼香の番になったら、焼香台の前から2歩程度の地点でいったん立ち止まり、本尊、遺影、位牌に軽く一礼します。遺族、喪主、僧侶などの席がそばにある場合はそちらにも一礼しておきます。
その後、焼香台まで進んで計2回の焼香に入ります。まず右手でお香をつまんでから、左手を添えて額に押しいただき、念じてから香炉に入れます。2度目の焼香は押しいただかずに、そのまま1回目のお香の隣に置きます。
曹洞宗の線香の本数は1本が基本で、線香立ての中心部に折らずに立てます。線香を立てる際にはまず姿勢を正し、一度額に頂いて念じてから供えます。火を消すには左手であおぎます。
葬儀の際は、故人が迷わないように線香は1本だけ立てます。一方、僧侶がお供えをする場合は2本立てることもあり、これを迎え線香と言います。仏や導師を迎えるためのもので、その後に入ってきた導師が供えて計3本になります。
曹洞宗のまとめ
曹洞宗は鎌倉時代の初期に道元によってもたらされた禅宗です。宋に渡って禅宗の教えを学んだ道元は、日本に帰国した後にひたすら坐禅に打ち込む禅宗の教えを広めました。
坐禅を手段ではなく目的と捉えること、日常生活の中の食事や掃除などの行為を修行とすることなどが道元の教えの特徴です。道元の入滅後、その教えの流派は次第に曹洞宗を名乗るようになりました。
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