宗派の違いは?実家がお付き合いしているお寺の宗派とは?(真言宗編)
真言宗は平安時代初頭に成立した日本の仏教の宗派で、大乗仏教の1種にあたります。真言陀羅尼宗や曼荼羅宗と呼ばれることもあります。
真言宗の教義の特徴は即身成仏です。仏のように清らかな心を持って適切に行動すれば、人間は生きながらにしてすぐに仏になることができるという教えです。隠された真実の教えという意味から、密教と呼ばれることもあります。
即身成仏を実現するための手段として、真言宗では修行を重要視します。体を鍛える身密、言葉を鍛える口密、心を鍛える意密の3種類の修行を実践することで仏の境地を目指します。
真言宗の開祖と歴史は?
真言宗の開祖は空海です。平安時代初期に活躍し、774年に生まれました。平城京に上京して大学で学んだ後、空海は803年に学問僧として唐に留学しました。
インド出身の般若三蔵に従事して密教に必須の梵語などを学んだ後、805年に師となる恵果と出会います。恵果は1000人以上の弟子の中から奥義を授ける対象として空海を見出し、わずか半年で密教を伝授されます。
806年に日本に帰国した空海は、高野山を拠点としながら密教の普及に努めました。空海は優れた書家としても知られ、弘法も筆の誤りという諺にもなっています。
空海の入滅後、真言宗は時代の流れとともに分かれていきました。空海の教えを重視する古義真言宗、新たな教義を打ち立てた新義真言宗、律宗と融合した真言律宗などがあります。
真言宗のお経はどんな意味?
・十善戒
十善戒とは、十の項目から構成されている善なる戒めのことです。この場合の善はいわゆる善行とは少し異なり、それを行うことによって自らも安楽を感じられるような行為を意味します。
戒とはそれを守るという行為規範を意味しますが、外から守ることを強制されるのではなく、自分自身が決心して自発的にそれを守ろうとするのが特徴です。一方、罰則付きの厳しい行為規範としては律というものがあります。
・舎利礼文
仏教の始祖である仏陀が入滅し、火葬された後に残された遺骨を仏舎利といいます。舎利礼文は仏舎利に対する感謝と敬意を表した文言です。そのため、仏陀の言動録に由来することが多い一般の経典とは、異なる雰囲気があります。
舎利礼文は、唐の時代の中国で活躍したインド出身の密教の僧侶である、不空三蔵が明州育王山という地で見出したものとされています。
三蔵とは本来は仏典の総称ですが、仏典に精通した偉大な僧侶も三蔵と呼ばれるようになりました。西遊記の三蔵法師もその1人です。
真言宗の本尊と脇侍は?
宗派の信仰の対象として最も尊重される本尊と、本尊の左右に祀られる脇侍をご紹介します。
真言宗の本尊の中心となるのは大日如来(だいにちにょらい)です。大日如来は真言密教における最高の存在とされる仏で、大日は大いなる日輪(太陽)という意味です。その名の通りこの世の全てを照らす存在であり、宇宙の真理を表しています。
真言宗では、この世の全ての仏は大日如来に由来するものと考えます。それゆえに、本尊は必ずしも大日如来でなくてもよいとされます。全ての仏は大日如来の化身であると捉えるからです。
そのため、真言宗の宗派のお寺の中には本尊として大日如来ではなく、阿弥陀如来や釈迦如来を祀っているところもあります。
真言宗で多く祀られる脇侍は、真言宗の開祖である弘法大使と不動明王です。不動明王は密教における明王の一種で、大日如来の化身であるとも言われます。動かない守護者を意味し、信じるものを力強く守護するのが特徴です。
真言宗の数珠と合掌の特徴は?
真言宗で用いられる数珠は、主に念珠と呼ばれます。真言宗の代表的な念珠として、空海が唐から伝えたとされる振分念珠があります。
真言宗の念珠には108個の主玉が付いていますが、これは真言宗における金剛界の百八尊を表しています。また、主玉の中には四天玉と呼ばれる4つの玉がありますが、これは密教の宇宙観を示す曼荼羅を表現したものです。
密教の一種である真言宗では、修行に役立つ用具として念珠を重視しています。念珠をすり鳴らして音を出すのを尊ぶのが真言宗の特徴で、人間が持つ108種類の煩悩を「すり砕く」ことを表現したものです。
真言宗の合掌の方法として、金剛合掌と蓮華合掌があります。金剛合掌は右手を上にして左右の指を組むもので、蓮華合掌は五指をそろえて蓮華のつぼみのような形にするものです。
真言宗の葬儀の特徴は?
仏教の葬儀には基本的な流れというものがありますが、密教である真言宗の葬儀には、他の宗派とは異なる2つの特徴的な儀式があります。灌頂と土砂加持です。
灌頂は故人の頭に水を注ぐのが特徴の儀式で、仏教の発祥地である古代インドで国王の即位に用いられていた儀式が仏教に取り入れられたものと言われています。故人が仏になることを意味するものです。また、故人のお墓に水をかけることも灌頂と呼ばれます。
土砂加持は密教の大きな特徴の1つである、護摩を用いて行う儀式です。清めた土や砂に護摩を焚いて真言を唱えることで、土砂に仏の力を持たせます。それによって故人を保護する道具とするものです。
葬儀で用いられる土砂加持は、納棺の際に故人の体に振りかけられます。それによって故人の生前の罪や苦しみを消滅させ、仏門の道をまっすぐ進めるようにします。
真言宗の焼香の方法は?
真言宗の焼香の回数は基本的に3回です。本尊、大師、先祖のそれぞれに焼香をするという考えによります。もっとも、葬儀の参列者が多い場合は短縮のために1回の焼香が指示されることもあります。
焼香ではまず香炉の前で一礼します。次に右手の三本の指でお香を取ったら、額の高さに持ってきてから香炭の上に置き、焼香を済ませます。規定の回数の焼香を終えたら合掌して戻ります。
真言宗では線香の数は3本立てるとされています。焼香と同様に本尊、大師、先祖のそれぞれに線香を立てるものですが、通夜や49日までは1本とする場合もあります。
真言宗の線香は3本とも折らないのが特徴です。1本は自分から見て手前の側に立て、残りの2本は仏壇の側の左右に立てます。線香立ての中で、3本の線香がちょうど三角形になるように立てるのがポイントです。
真言宗のまとめ
真言宗は平安時代初期に空海が開いた大乗仏教の1つです。空海が唐で学んだ密教の奥義に基づくもので、人間が生きながらにして仏の悟りを開く即身成仏を提唱しています。
真言宗では全ての仏は大日如来に由来すると考え、体、言葉、心の3つを鍛える修行を重視します。密教における宇宙観を表す曼荼羅など、独特の様式を備えているのも真言宗の特徴です。
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